双子座ギャラントスタイル 来住野恵子
退屈するのが怖い
しゅわっと甘くて頭がいたい
茨の白い花びらがゆれおちる
千の絶対 万の真実
そらに突き立てた小指の先で受信するから
瞳を覗きにっこり微笑んで
約束などしない
この吉祥のケイチョウのフハクを着こなす
それもいい
ときみちた浜辺はうるわしく
砂なら愉快に踏まれてあげる
貝なら虹に砕けてあげる
たおれるまで
たぶん真っ赤なピンヒール
不可思議ばかりがつぎつぎ孵化して
ひとりなのにひとりでにパ・ドゥ・ドゥ
何故だか知らない
疑わないけど信じない
不死の鏡にうつる死の貌が
夕映えのように紅潮する
めくれた晩夏
跳ね躍る哀しみがわれ知らず描き出す
うきうき絶え絶えのいわし雲
からみつく炎の唐草文様
明日は晴れ
いずれ
すがやかなひかりの断頭台で風にならぶ
魂魄をはなれた死の主旋律
転がる無声の洞を吹き抜けていく
秋だ
あなたが誰であってもかまわない
くちどけなめらかにごきげんよう
あおい飴玉ひとつの地球
そこなしの脆さを担い
浮かれ騒いで蒼白のあしゅら、悲劇よさらば。
影絵芝居
それもいい
しゅわっと弾けて暮れなずむ
笑い皺まるで涙のクレバス
裏木戸がひらく
老いた象の目に世界が落葉する