精神世界 生沼義朗
雨の朝、電車のなかで閉じた傘の突起で
あまりもの雨の強さに反対側ホームのキオスク歪んで見ゆる
吊り橋が大学正門前にあり、試されいるは智慧かモラルか
くろがねのつくえに向かいみな書ける答案こそが富国強兵
パフュームがあかるくかるく唄う
乾麺のスパゲットーニこすりつつうじゃらうじゃらと虹立つるまで
チェレンコフ光いろのネクタイいっせいにみなで締めればこの世はあおし
灰色のペンキで○を描いたらひろがる精神世界、ようこそ
比喩としての広い場所あり 呼ぶ声はその場所はたして狭くするらむ