薔薇の贖罪 馬場駿吉
常ならぬ世に大いなる春の月
暮れかぬる放心の眼の数知れず
靴のみがラムボオとなる春の泥
葛切の終の一とすじ掬はむと
マヌカンに読書の寸暇ソーダ水
刻とどむすべなけれども更衣
禁色の禁解かれたり杜若
自画像の眼光に夏来りけり
薔薇園を薔薇の
蔓薔薇の贖罪は露降らすこと
執筆者紹介
馬場駿吉(ばば・しゅんきち)
1932年、愛知県生まれ。句集に『夢中夢』『海馬の夢』『耳海岸』など。現代美術に造詣が深く、美術評論家としての著書もある。2006年より名古屋ボストン美術館館長。