吉野・高野山行 三宅勇介

吉野・高野山行

目に見えぬ桜浴ぶれば南朝の王の儚き邪気をも浴びぬ

檄文の一文字宙でまねぶなら吉野の院の硯は誘ふ

一拍の永き添水の音乾き捏造されたるものの愛しき

吉野郡天川村のキャンプ場未明に近づく鹿のありけり

南朝の家臣を祖先に持つと言ふ爺は時々鷹揚になる

葛餅を買ひて釣り銭受け取れば乾坤通宝一枚混じりき

幼子は柿の葉寿司の柿の葉を一枚一枚捲りて調べぬ

空海を先導したる黒き犬白き犬とは違ふ犬ならむ

奥の院土産屋の犬は偉大なる空虚に向けて欠伸をすめり

高野山精進料理の蒟蒻の刺身を略してさしこんと呼ぶ

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「作品2012年6月29日号」の記事

  

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