口減らし 長谷川耿人
瀧つらら木霊は渓の奥底へ
すぐ空になる徳利や雪起し
ねんねこや祖母の記憶の前かがみ
身支度に暖房いまだ追ひつかず
足跡を消しゆくぼたん雪となり
をみな立つ村長選挙遠雪崩
ふらここの間合ひ告白には遠し
カンダタの糸が降りさう杭の蜷
目は瀬戸へ指先は干鰈へと
口減らし記す村史や忘れ雪
作者紹介
- 長谷川 耿人(はせがわ こうじん)
本名:長谷川修一
昭和38年11月14日 神奈川県川崎市生まれ
平成14年 「春月」入会
平成23年 句集『波止の鯨』
俳人協会会員