歳末より如月のうた 今井 聡
冬に読む飯の
つづまりは儒・仏・道なれ如何にせむ煮込めば牛蒡は根のやはらかく
ぬくもれる砂に埋もれる夢をみて醒めてののちの身は痛みをり
歳末は餅つく里の子等をうつす超薄型がならびて売らる
大晦日夕べ実家の門べにて生垣のアカメ刈られしを見つ
気の強きをみなよとおもひ吾は黙し汝も
美しい恋愛でしたといはれたきをとこは饂飩を箸もてつまむ
空澄みて風ふきやみぬ寒き日の汝がことを吾が忘れたる折
落葉ののちも盛んといふべきと
満ちしのち欠けそむる月を仰ぎつつ上れる坂の緩けれど長し
乾きには潤せぬほどの夕のあめ傘買ひにゆく途中にて降る
水槽に肺魚沈める夜は更けて 自が壮年の生に親しめ
作者紹介
- 今井 聡(いまい さとし)
1974年生まれ。「コスモス短歌会」「棧橋の会」所属。
第二十四回短歌現代新人賞受賞