屈折率
遅れるという声、電話の向こうでは濃紺の雨降り始めたり
通り雨過ぎたるのちの「にじ!」という子どもの声に虹現れぬ
紫はみえないというきみの虹 屈折率の違いを生きる
まんなかにちいさな鱗てさぐりで探せばきみの背きみだと思う
でっぱったピースとへっこんだピースぼくの話をきみが聞いてる
裏返す靴の内からさらさらとふたりで踏んだ砂のささめき
停電のごとき失恋 潮の香の木蓮通りの坂をのぼった
この夏をなかったことにする手品みずに戻ってゆくかき氷
充電が完了するまで雨よ降れ窓はしずかに開かれていよ
金木犀ひらかれてゆく十月に印字の薄き切符を買いぬ
作者紹介
- 辻聡之(つじ さとし)
1983年、名古屋市生まれ。2009年、「かりん」入会。