屈折率  辻聡之

  • 投稿日:2012年11月02日
  • カテゴリー:短歌

屈折率

遅れるという声、電話の向こうでは濃紺の雨降り始めたり

通り雨過ぎたるのちの「にじ!」という子どもの声に虹現れぬ

紫はみえないというきみの虹 屈折率の違いを生きる

まんなかにちいさな鱗てさぐりで探せばきみの背きみだと思う

でっぱったピースとへっこんだピースぼくの話をきみが聞いてる

裏返す靴の内からさらさらとふたりで踏んだ砂のささめき

停電のごとき失恋 潮の香の木蓮通りの坂をのぼった

この夏をなかったことにする手品みずに戻ってゆくかき氷

充電が完了するまで雨よ降れ窓はしずかに開かれていよ

金木犀ひらかれてゆく十月に印字の薄き切符を買いぬ

作者紹介

  • 辻聡之(つじ さとし)

1983年、名古屋市生まれ。2009年、「かりん」入会。

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