death by hanging, with my singing 吉田隼人
おそふゆの道ゆく人らみな首を締めつくるもの巻きゐて 死ぬの?
壇蜜と冬の街路樹かたぶける者らはなべてひかりを負へり
身を護る用にあらねば零時まへドーナツ・ショップにマフラーをとく
袖口をだぼつかせつつ牛乳を熱せり夜のふかきところで
早咲きのさくらくれなゐなすさなか無事、踏切をわたり終へたり
絞首刑 慣れぬネクタイむすぶときラジオは歌ふやうに報じぬ
洗濯機まはすのに要るいくらかの洗剤、柔軟剤、自由意志
春怒濤見つついだけりうなそこの首長竜のあをき孤独を
気圏よりあたたかき雨ふりきたり悲しみ方を教ふるごとく
秦佐和子いくたびか深きお辞儀して去りぬさんぐわつ雨ぬるむ頃
春雨は縦に降りけりさよならが別れの語たるこの国にゐて
コーリング・ユー 死ぬときに見えるのはなんだらうねと呼び出してゐる
自死未遂譚を聞くうちおほかたの桜は雨で散つてしまつた
花に雨、まよなかの虹、たいせつなものだけ抱いて死んでゆかうね
とほりあめとほりすぎたり永遠にエチュードのまま過ぐる革命
作者紹介
- 吉田隼人(よしだ はやと)
平成元年、福島県伊達郡保原町(現・伊達市)生まれ。町立の小中学校、県立福島高校を経て、平成二十四年三月に早稲田大学文化構想学部(表象・メディア論系)を卒業。現在は早稲田大学大学院文学研究科(フランス語フランス文学コース)修士課程に在学中。専攻は二十世紀フランス文学・思想、特にジョルジュ・バタイユ。平成二十年四月、早大入学と同時に「早稲田短歌」に参加。平成二十四年、同人誌『率』創刊に参加。