日録 森川雅美
いくつかの不在が内側を
ずうんずんずうんと進んで
さようならぼくの
ちいさな午後が裏切られ
何も纏わぬまま逃げるなら
やさしさ今日きっと
破られていく安らぎに
生きていくため
ぶら下がりの空虚までの
はなはだおかしきリズムで
蛇の尾を踏むながなが
腐って腐臭ですかと
俘囚は拡がりながら陽炎の
ふっくらとした
ずうんずんずうんと進んで
万歳なんていわずに
肌に会う大寒の甚だしく
弱りきった首の筋の
ためらいがすこし痛く
延長を生きているんだ
ずうんずんずうんと進んで
これからの水辺に
ぼくたちの明日の背中は
確実に弱っていき
まだ残されている足の跡の
色褪せている日日に
やはり悲しみの予感と
また切り取られ
ありがたいまだ手に
ずうんずんずうんと進んで
感触がにぶるより前の
あまる雪景色から
前世紀の遺物がよみがえり
まぶしく輝くならば
いくつかの不在が内側の
ずうんずんずうんと進んで