第7回詩歌トライアスロン融合作受賞連載第5回 『少女たちⅡ』 草野 理恵子

第7回詩歌トライアスロン融合作受賞連載第5回

『少女たちⅡ』

草野 理恵子

(舞台)

草原にある舞台で私たちは演じた

私たちは山の前に描いた山を配置し

どちらがいいか笑った

何でもよかった

お互いのことを何でも分かっていると言い

何もわかってくれないと答えた

私たちは黒いマントを着て

誰にでもなった

靴下はみんな白で

上まで上げていた

舞台に孵化場を作った

生まれるものに名前を付けた

皆のものにして育てた

凶暴な声が上がるまでは

山の前山を配置し靴下はみんな白くて上まで上げて

(赤いワンピース)

私たちは赤いワンピースを着て

赤い靴を履いた

同じ形に髪の毛を切り

同じ目の角度にした

かくれんぼをした

半分隠れでも名前を間違え

その場に倒れた

ごろごろごろごろ

私に似た人がごろごろと雷のように鳴った

今日は豪雨

髪の毛が濡れ

ワンピースが体に張り付く

食事がすむと食器を洗う

滑って割れて手のひらから

赤いワンピース

かくれんぼごろごろごろごろ雷だ体に張り付くワンピース赤い

(鎖骨)

白樺の木を通して空を見上げると

雲と同化していた

人を迎えるような雲の形で

白樺を辿ればいいのかなと思った

私と彼女は小舟に乗った

派手な色の魚が跳ねた

骨と骨がぶつかる音がした

その音が鎖骨に響き

うすい凹みに水が溜まった

きっとずっとこの魚のことは

忘れないだろうと思った

彼女は目を伏せていた

骨と骨ぶつかる音が体内で 薄い鎖骨に水溜り跳ねる

(尾ひれ)

彼女はマッチ箱を取り出すと

大道具に火を放った

私はマッチを始めて見たので

危うく逃げ遅れるところだった

その上脚は無く尾ひれしかなかったので

素早く動けず髪に火の粉が散った

炎は高く燃え上がり

海と空は焼けた

「故郷は違うところにあるのよ」

彼女は燃えつきた灰をひれで蹴った

尾ひれは歩きやすくなり

私たちは雨の音を聞きながら外に出た

脚がなく尾ひれだけしかなかったの髪の毛に火の粉海と空焼け

(皿と石)

食事がすむと彼が皿を洗うと言った

その時私は皿になっていたので

遠慮したんだけどどんどん洗い始めた

だから水の中で踊らなきゃならなくなって

手をひらひらさせた

何やってるの?って聞くから

踊ってるって言ったら納得した

それからじゃーじゃー洗うとこでは

のたくりまわって疲れた

彼はあくびをして皿洗いは終わった

夢を見たよと言った

君が時々人間でなくなる夢を

それでどうだった?

彼は黙って石みたいな顔になった

ああ今石になっているんだなと手に触った

ぬるかった

皿になり水に合わせて踊る君 石になる僕ぬるいよ触れば

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