








第10回詩歌トライアスロン三詩型鼎立部門受賞連載
英雄
山崎 秀貴
僕は君の詩を読みはじめて
僕は君の詩を読み飽きた
僕は詩を書きはじめて
君は僕の詩を読みはじめて
君は僕の詩を読み飽きた
君は僕の詩を読み飽きて
僕は君の詩を読み飽きていて
だけど
君の詩と僕の詩をみんなが読みはじめた
君の詩と僕の詩をみんなが読みはじめて
君の詩と僕の詩をみんなが読み飽きた
みんなは詩を書きはじめた
君の詩も僕の詩もわすれて
読むことをわすれて
書くのにのめりこんで
世界は読まれない詩にあふれた
そのとき英雄があらわれた
不思議な文字列の名
無限に分裂する身体
英雄は読むことに飢えていた
英雄の胃袋は無限
英雄はみんなの詩を読みはじめて
英雄はみんなの詩を読み飽きない
英雄は君の詩を読みはじめて
英雄は君の詩を読み飽きない
英雄は僕の詩を読みはじめて
英雄は僕の詩を読み飽きない
とうとう英雄は
僕の詩を読みつくし
君の詩を読みつくし
みんなの詩を読みつくし
それでも英雄は飢えたまま
英雄は新しい文字をつくった
英雄は新しい言語をうみだした
英雄は詩を書きはじめた
指先は無限に分裂した
英雄は英雄の詩を読む
英雄は英雄の詩を読み飽きない
世界は英雄の詩にあふれる
英雄は書いて読み続ける
—— ははは、いいね、どうやって出力したの?
山崎 秀貴(やまさき ひでたか)
1993年、大阪生まれ。ドイツ・ハンブルク在住。楽園俳句会。Twitter: @hdtkymsk