Benedictus 来住野恵子
壊れた天窓から洩れてくる
冷気
闇の息吹
新月の杯にきこえない音楽があふれる
微塵なす符はゆるやかに回転し
あてどない沈黙を踊る
わたしの灰が吹き転がってゆくさき
どんな必然にもひらかれて落下するひかり一枚
真空の亀裂に生えそめる
慈悲の座相だ
ねじれめくれひきつれた弦の
呪詛を祝福にゆらしさざなむ
数えきれない海たちが
とおい受精の喜悦に湧き
岩塩のような天の涯(はて)
一本の樹のふかい信頼を呼吸する
この星の肺腑もあなたを通している