鈴木くんがトマトだった頃
志波姫は
友だちの埋立地に行ったことがある
落ちていた髪の毛を
ほおばりながら
台所にあるギザギザに沿って
足の長さを切り落とす
深夜、そこには
だれもいない部屋で
私はよろこんでいる
両足の膝んとこ、ここに断面があって
のけぞった姿勢のままで指を入れていく
思わず
奥歯がカチカチ鳴って
信じられないほど大きな声が
こうやって
人は化け物になっていくんだな
昨日まで
ここはきれいな海で、おいしい魚がよくとれた
そんなことを
千年かけて住んでいた
町並みが
ちょっとした隙につぶれた
トマトのような今では
考えられないことだよ鈴木くん
胸筋が
盛り上がってきた
志波姫はいつも
土のにおい、つよい消毒液のにおい
それは
要するに私のもので
曲がってしまった
この首は
鈴木くんから
本気の力をこめられたい
二人の姿を
写真に撮って、保存した傷をなめていたい
やがて
嵩が増えるだろう埋立地で
友だちも
化け物になっていくのなら
考えただけで
胸筋が
盛り上がってきた
志波姫 鈴木一平
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