うしとみ コマガネトモオ

【6月7日掲載】自由詩 コマガネトモオ-1
【6月7日掲載】自由詩 コマガネトモオ-2

うしとみ コマガネトモオ

ホウライ牧場には今日も牛
なんて詩が、中原中也にもあったようななかったような
詩はなくても牛がとにかく
牧歌とはこういうこと
ぽかぽか陽気に
あたたかな草いきれ
もうもうあちこちから
健康そのもの
穏やかに草を食む、
楽しげに尾が揺れる、
牛がたくさん、
うしとみ、牛富。
なかに人気の世界地図模様の個体もいて
この五大陸に、畜産してない場所がないなと
思い起こしてみたりする。
グーグルマップに写り込んだ世界の牛を数えてみて
世界規模でみんな同じ方角を向いている
結果だったという報告がある。
ホルスタイン種はその豊富な乳産生によって
生涯食肉を免れてくれるのかと
淡い夢を見る。
食物連鎖でこの体を維持しているということを
学んでくださいという厳しく鋭い食育課題が
牧場入口の
ジンギスカン食堂であるのだろう。
あまりに淡い夢かも
しれなかった。
      うしとみ、しよ
食物連鎖の頂点が
あわれがるのも偽善だし
ライオンはサバンナでそんなこと考えないでしょというありふれた
感慨も思い起こされる
ライオンは、シマウマやヌーの群れ
その圧倒的な個体数を悠長に
けだるく眺めている
爪を砥ぎ、舌を潤し。
非捕食者は常に数の上で捕食者を圧倒している。
ふとこの観光牧場で
人の数が牛の数を上回ることが気にかかる。
大変な繁盛だけど……
いや待てよ、そもそもこれ以上ないほどの繁栄をこの地球上で
人類は迎えてせめぎ合っている。
非捕食者の、数の上での繁栄を
想起する。
     うしとみ しよ ぞ……
 
 
 
 
※今回は、百人一首 藤原清輔朝臣 への返歌です。

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