幽霊ごっこ 暁方ミセイ
電柱があって、塀の向こうには川沿いの畑がある
その川辺で火を燃やしていて、
ぱきぱきと枝の割れる音がしていた
夜だから、火だけが見えた
それに音だけがしていた
人がいることだけがわかった
そこに人が
いることだけが
夜の街はみんなドアを閉ざしている
歩き回り
足音をたてる
わたしは憧れる
丸い外灯のある玄関と車庫
自転車が二台止められて
まだ十ほどの子どもの足が見えるよ
マンションの窓の
薄水色のカーテンと
移り変わるテレビの光に憧れる
重たいドアの蝶番が動く音と
蛍光灯に照らされる散らかった部屋のなか
亡霊として
わたしの名前を記さない街の中を
うろつく
うろつく
そのくせ
あの川辺の火だけを
本当に見たという気がする