前 夜 亜久津歩
夢から醒め ぼくらは
犬の風だった
尾をふるように爆ぜ
あとは闇
紺碧は
人知れず狂っていた
黒いかもめの
白い影
夢から醒め 舐める
とうめいな猿轡
生まれつき必要な喉で
処置されずに済んでいる
見ひらいた義眼も
左下がりの口角からぼろどろ毀れる人格も
赤く脈打つ汁も記憶ではない
めざめたくなくて
かみしめるのに、
救いようのない光が押し寄せてくる
まるで未来のような暴力がほろぼす残夜
紛れていればよいものを
幸せそうに
きみは尾をふる