化物 山口勲
夜中に父の財布から抜いた金を
すべてゲームにつぎこんだ
やめた理由は忘れた
抜かなかった夜は金属バットで殴られることを思い
そのまま十二年同じ家に居座った
熟睡したらバットが風を切る音に気づくまい
つまりは殺されたがっていたのだ
それが答えだと信じていた
自動でお金を数えるレジですら一万円札が入るたびに店員がメモを取っていて
咎められなかったのは待たれていたのではなく
彼は語る言葉など持っておらず
私は化物に違いなかったのだと
眠る妻と子を見て再び気づく
この見方のどこまでが真実であるかを信じたくなかったので
それが無駄だと理解するまで人生が始まることがなかった