半過去 九堂夜想
Ⅰ
貝寄せに
ことごとく
余白となる
朝
病める
天窓の
遠く
書き置きの「花器、沖の…」
鳥影が
断つ
占方の街、街
トルソーを嬲るたび
おごそかに
亜鈴は
うすびかる
Ⅱ
自動人形の
微笑みの
幻日さながらに
フリュート流域から
仮初の姉たちの
つめたい
羽音(が)
いろはうた
悲に
のたうつ
蝶の
うみなり
となり
ふたなり
となり
互みに游ぐ
鏡文字
薄明の
いや
立ちくらみ
悪食のさなか
ギロチンが
単性生殖をうながす
Ⅲ
黙の楽
忘却の杯
星読みの眇
胎位の逆十字
地平は
何に
日々割れるのか
縊られた水に
くちづけて
宝石泥棒どもが
多孔質の死を
化粧う
時
知らず
誰が
知る、か
白紙委任その
氷れるまま
虚の楕円運動を
終わらぬオートバイ