日めくり詩歌 短歌(藤原龍一郎)

救助隊員家具をかき分け叫びゆく「だれかいますか」「だれかいますか」

鹿嶋市 加津牟根夫
毎日新聞四月十日短歌欄 米川千嘉子選歌欄


 作者の居住する茨城県鹿嶋市も地震によってかなりの被害を受け
ている。「だれかいますか」「だれかいますか」という救助隊員の
必死の呼びかけは、津波に襲われた後の瓦礫の山の映像と重ね合わ
せると、いっそう実感をもったものとなる。しかも瓦礫ではなく「家
具をかきわけ」と作者は表現している。家具という家庭の中の具体
は、否応もない災害の唐突さと残酷さとを同時に浮かびあがらせる。
「救助隊員」という表記も、国家的に動員された自衛隊のイメージ
ではなく、急遽、地元で結成された消防団や警察官による緊急救助隊
を思わせる。まだ生々しい被災現場からの一首といえる。

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