風聞 國峰照子
過去はどこへ流されたのか
たましいが充満する村
古郷を呼びさまそうと
問いつづける異形のものがいる
あれから幾年も過ぎ
山には面妖なキノコが育ち
打棄てられた村を野ネズミが制圧している
雨にうたれて牛らしき影がうごき
風のなかに孔雀らしき尾羽が触れる
非人称のものがさまよう透明な夜
どこからともなく
蝦蟇の声がきこえる
祈りとも呪詛ともとれるそれは
汚染された
砂時計のくびれに挟まった
山姥の喘鳴か
いまも異物として
山姥は彼処にありつづける
と伝え聞くがさだかではない