ダイアモンドリリック 海東セラ
雪にとざされた街でねむりから覚めるのはわたしだけではない、
あなたのあのひとのだれのかれのかなしみに内がわから曇る窓が
かぼそい線描をうかばせると、がらんどうの眸のなかで灯は生き
物にかわり、ひとつ消えひとつ瞬いてひとつふるえひとつ溶けて
にじんでいる、昨日とちがうのは深い雪の足あとのせい、くっき
り象られたくぼみに外灯のかげが棲みはじめると、霧氷はめもり
をわずかずつのばし、奪われ与えられてまろむ輪郭をたしかにそ
こにあった人のかたちへ、とおい距離をたどる沈黙を、ほほえむ
水音までどうかうつろって、雪におおわれたねむりのあまい声を
蒸散する、あの子たちがならんで寄りそってむすばせた結晶はく
ずれそうでこわれそうで支えられるせつなの磁力を羽ばたいて、
睫毛のさきに細氷がふれると、かそけく火花を噴いて雪の祝祭に
いくどもつつまれる、星と樹をしるす窓に現れてきえるのはわた
しの街だけではない、去ったのちもあかるむ、たくさんの屋根も
とびらもベランダも雪のそらのそこ、ひかるのはなみだが凍った
から、わたしたちの冬のちりあくたすべて氷になっておとなうク
リアなひかりは、めぐりあう窓をだいてうつりあって全反射する、