次に住む人 鈴木一平
「住んでいた人のこれからを、住む人たちが
持ち寄った、川の岩陰に住んでいた」
それでもおなじ家を出て、だれか歩いていくのをおぼえてる
橋の下に降りて
川に向かって伸ばした手が
二階の家には、もうべつの人が住んでいた
うすい足あとの、厚みでいまは
通わなくなった人の入り口を、すこしだけ開けておく
指のすきまで、四つに分けた
ほそながい水のひとつを飲んで
にぎりしめた水草を、今度こそ、一枚きりの地面にする
大家さんがぬったペンキで、開かなくなった
ゆうびん受けと
きのうもだれかを持ち上げた、階段に傷をつける足
その歌で組んだ二枚の絵、そのあいだに立つ
地面のうえに
着がえを置いてきたのに気づいて
取りにいこうとしている、足あと