塔   佐峰存

0723

塔   佐峰存

冷えた朝に凝結した
右手の親指の爪の麓から
血行の陽が射す
萎びた花が ふとした熱の
動悸にひらくように
厚ぼったい指も小刻みに外を求め
いたる地のこぶしの直中で
眠っていた身を起こす
煙の海の廃墟から飛び立って
長い呼吸のように伸びる
それは塔

壊れかかった国々の足場の上で
共に浮かぶ あなたの手も
先端の指を一本ずつ放つ
卵の殻のよう 切れ目のない
神経の線を経て辿り着く
柔らかな咽頭の
温度を 塔は探り当て
その先は見渡すかぎりの丘陵で
大気の層へとのぼっていく
雲の襞の実を揺らすよう
指は積み上がり
幽かな息の道を通す
宿す風に 膨らみながら
塔の輪郭は煌々としているのだ

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