国のきらいな匂い 萩原健次郎
雌雄の、からだのちがいは
わたしと他人の、からだのちがいは
すこし変態する、そのとちゅうで
すきまができあがって
でたり、ひっこんだり
つぶれたり、さけたり
にごった汁がでたりして
雌雄の恥ずかしさが、生きる根拠だったりする
というのは嘘ではないような
わたしは、川も山もきらいになり
変態のとちゅうで、うろこのある皮膚を
屈伸したり、褶曲したりして
息もしているけれど
息をとめたり、痙攣したり
汁をだしたり、舐めたり
される
樹脂の頃がなつかしいから
樹脂で性別も分けて
そこに燐寸の火薬をこすって
ぼっと燃やせば
すべての恥ずかしさが焼けて消える
そういうケミカルな匂いは、わたしの
性欲をすこしは、絵にする