スミレの碑 萩原健次郎
苦い薬はいや
かい、
苦悩は、あなたをきれいにする
はなびらのさき
朝露にふられたり、かぶせられたり
春風にふかれたり
ゆらゆらしている間に
粉々にしてしまおう
泣くのがまんしてるから
さきに身が枯れて
まう、
濃縮のあなたのはなびら
むしゃむしゃ
臓腑のなかへ
なかの碑へ、つっこむ
あなたにも茎があるように
野の碑がひかってる
苦い味をいっしょに一息で飲めば
この場面は消える
消えるなら、野のすべてを
とも連れに
少しだけ音楽をがまんすれば
いつのまにか、茎は焼ける
のよ、
生きていても碑だから
二茎の焦げ焦げで
輪唱すれば
それだけで生涯が
雨に洗われる