ヴェランダは散らかっていて六月の台風がもうじきやってくる
帰るときかなり明るくなっているけやき並木をふたたび歩く
ローソンで缶コーヒーと水を買う日常という時に備えて
夕食を終えてしばらくしたあとに普通の服で見に行く蛍
ゆっくりと時は流れているけれどなにもできそうにない雨の日
ひそやかな暮らしのなかで中継の名人戦を見ているゆうべ
こうやって座っていても草上の午餐を僕が知ることはない
どうしようもなく暑い日にあおぐ手を止めてうちわの柄を噛む子ども
あきらかにちょっとおかしい看板を広い通りに出しているカフェ
はてしなくつづく世界の片隅に光のふりそそぐ半夏生
作者紹介
- 土岐友浩(とき・ともひろ)
一九八二年、愛知県に生まれる。二〇〇四年、「京大短歌」に入会し歌作をはじめる。同人誌『町』に参加。現在所属なし。医師。左利き。