音もなく大蛇がしのびよるにも似てみるみる津波が町をのみこむ
京都市 末広正己 4月18日読売歌壇 小池光特選
この一首に添えられた小池光選者の言葉は次のようなもの。「短歌には機会詩という側面があり、大きな事件、出来事があったときはいっせいにその事象を歌った短歌がつくられる。まさにその猛威は大蛇のごとく、息を呑む。」。テレビを見ての歌だが、最初にあの未曾有の津波の光景を見てしまった時の驚きを「大蛇」に喩えている。シンプルすぎる気もするが、それゆえの実感として受け止める。
ちなみに「蕗の薹詠みたる人の住める町大船渡市に思いをはせる」という四街道市の平山健さんの歌も入選している。そして、その歌への選者の短評は「三月二一日のこの欄にのった増田邦夫さんの歌。読者は、住む町の名前さえ覚えている。短歌は人と人をつなぐ。」というもの。新聞歌壇というものの特性を述べている。