再会 宇田川寛之
セーターの少年が解く時間の矢
着膨れて坂東太郎に挨拶す
去年今年陰翳乏しくなつてをり
凩のところどころに忘れ物
遠火事をきつかけとせし別れかな
エキストラ志望の集ふ寒夕焼
熱燗や戦後の生まればかりゐて
湯冷めして忘れちまつた言ひ訳は
待ち合はせ場所に判子屋ありにけり
乾杯のあとのゆらめき春隣
宇田川寛之(うだがわ・ひろゆき)
俳人。1970年生まれ。98年「吟遊」創刊に参加、2013年退会、現在無所属。
共著『燿―「俳句空間」新鋭作家集Ⅱ』(1993、弘栄堂書店)。