カムパネルラ 塚本 凜々子
落丁した少女期の記憶をさがす市立図書館の閉架書庫にて
片結びのリボンほどける きみをぼくの街へ呼びもどすみたいな風だ
蝶になれないまま死ぬさなぎ ラブホテルをお城だとおもっていたあのころ
うまく歩けないのを翼のせいにする 背中に重くのしかかる翼
ラベンダー匂う記憶のそういえばきみはウィンクが苦手だったね
いのちを燃やすみたいにきみが金色のひかりの粉をまとってたこと
失くすなら知らないままでいたかった うっかりあくびをしたら夕暮れ
ひとりきりでいかなきゃいけない きみはきみの海へとぼくはぼくの森へと
きみがこわれたときあかるい音がした 春雷、窓硝子をひからせて 映画をみた
つくりものだとわかってて泣いた カムパネルラさようなら