救援のヘリの音にも馴れ眠る知りたる人は海の中なるに
岩手 三尾恭子
毎日新聞四月十日短歌欄 米川千嘉子選
前回紹介した歌と同じく、毎日新聞四月十日短歌欄の米川千嘉子選者の特選歌。これも深い絶望感を詠った一首。救援のヘリコプターの大きな音にも馴れてしまい、眠れるようになってしまった自分の神経。いくら探しても、津波によって海に引き込まれてしまった人たちは、もはやもどることはない。親類縁者、友人知人、あるいは職場の誰かれ。「知りたる人」という表現に、人生の重さが込められている。竹山広が阪神大震災に際して詠んだ「居合わせし居合わせざりしことつひに天運にして居合わせし人」という絶唱が、頭に浮かんでくる。