日めくり詩歌 俳句 高山れおな (2012/04/03)

七十五番 自然を詠む、人間を詠む(八)

左持

万両へ白雲は影重ねたる 井上康明

冬の靄人住む谷の欅の木 井上康明

左句。つやつやとした常緑の葉、寒さと共に鮮やかに珊瑚色を深める実。そのみごとな万両の樹の上を、おりおりに雲の影が過ぎてゆきます。「影重ねたる」に、なんともいえない清潔な時間が過ぎてゆくのを感じます。

深い谷に立派なケヤキが抽んでています。谷には冬靄がしずかに垂れ込めています。「人住む谷」というフレーズが一句の眼目です。人が住む谷とわざわざ言うからには、人が住まない谷もまたあるのでしょう。幾重にも谷間が重なる、山深い土地であることが想像されます。

いずれも山気に満ちた秀吟です。優劣はつけ難く、持。

季語 左=万両(冬)/右=冬靄(冬)

作者紹介

  • 井上康明

一九五二年生まれ。「白露」所属。

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