写真のなかでクレイシュの子どもたちが溢れて 望月遊馬
ゆらめくなか
雨はとめどもない
そこに映るやわらかな指、
そして採譜されていくもの
「あの子はうつくしい髪を結い夜の軽さに身をあずけた」
十一月の誓い
ひきあげていく楽団のように
花嫁がゆく白いけはい
シンシアリー・ユアーズ
手紙にはそう書いてあった
あの子はうつくしい骨を縫い
そしてわたしの胸に十字架が落ちたとき
こころに
苦しい雪が降るから
しずかにしていたい
わたしは
しずかにしていたい
「こころに冬の雨が降るから」
おりてくる冷たい景色にわたしは
冬の邂逅をかさねて歌い告げる
ここに始まりがあると
「雨のなか口紅にうすい貝がはりついて色恋のやさしさに堕したあの子はもう夢のなかに降りている。」
枯木のない冬の一季節
終わりにちかづく情熱のたいらかな
青
ほどかれていく感覚のなかで
しずかに灯るのは火
わたしの心の錘に布をかけて
冬はレンズのむこうで眠りについている
うつくしい
うつくしい
「写真のなかでクレイシュの子どもたちが溢れて」
息のなかに毀れていく
円窓のむこう
セイタカアワダチソウの残骸が綴れ織にされて
わたしのなかで木々がそだつ
それが終わりになるための
しずかな
音
夢に墜ちていく