声の(記憶の 渡辺玄英
もうすぐ切れてしまう
電話の声は(とぎれがちに
(星はひかり
どこから届けられるでんぱなのか
破線のように(ほそい道をたどって
(あたりは白く沈んでいく
遠くの星たちは明滅をくりかえして
ぼくは行き先を見失う(はずだった
だからここにいてはいけないと
その声は
あなたの声だけど
あなたが誰だったのか(思い出せない
電話が切れると(セカイは
闇にのみ込まれて(終わる
かもしれない(だろうか
(ききとれない言葉(擦り傷のような
星のない夜の公園では
ベンチに片方の手袋が残されて
(誰もいない
見えないけれど行きかう車の音がきこえる
時計のデジタル画面がうかびあがる
(青いかすかなキオクが(途切れがちに
なかった過去から届けられる
おそらくこれはあなたの記憶だ(おそらく
(電話をもつぼくはここにはいない
やはり誰もいない
そのうちにぼくではない人が
ここには遅れてやってくる
傷が星のようだ
(もう一度ここで生きたいと思いますか
いつでんぱは途切れたのか分からないけれど
星空の下で
きれた電話を耳にあてて
遅れてくる声をまっている