都会を歩く 金井雄二
都会の街中を歩いているとき
ふいに 自分の幼かったときのことを想い出しませんか
そんなこと 想い出しませんよね
だって 都会には言葉があふれていますから
話し相手がいなくても不自由はしないのです
光だってどこに行ってもあふれていますから
闇の中をとぼとぼ歩いた記憶なんか
とっくにどこかに消えていますね
高層ビルの
窓ガラス
午後三時の陽ざしが
反射して
眼が痛い
あのビルの向こう側に駅があるのです
さて、こちら側にいるぼくは
あのビルの向こう側にはどうやって行けばいいのですか
ぼくにティッシュペーパーを手渡ししてくださる方がいました
でも他には何もくださいませんでした
都会の街中を駅に向かって歩いています
幼かったときのことは想い出さなかったのですが
自分が独りなのだということは想いだしたのです
作者紹介
- 金井雄二(かない ゆうじ)
1959年、神奈川県相模原市生まれ。帝京大学文学部卒。個人誌「独合点」を発行中。「Down Beat」同人。横浜詩人会会員。日本現代詩人会会員
既刊詩集
「動きはじめた小さな窓から」(ふらんす堂/福田正夫賞)「外野席」(ふらんす堂/横浜詩人会賞)「今、ぼくが死んだら」(思潮社/丸山豊記念現代詩賞)「にぎる。」(思潮社)「ゆっくりとわたし」(思潮社刊)
1959年、神奈川県相模原市生まれ。帝京大学文学部卒。個人誌「独合点」を発行中。「Down Beat」同人。横浜詩人会会員。日本現代詩人会会員
既刊詩集
「動きはじめた小さな窓から」(ふらんす堂/福田正夫賞)「外野席」(ふらんす堂/横浜詩人会賞)「今、ぼくが死んだら」(思潮社/丸山豊記念現代詩賞)「にぎる。」(思潮社)「ゆっくりとわたし」(思潮社刊)