(Venezia-01) 来住野 恵子

来住野詩130802

(Venezia-01) 来住野 恵子

もうじき鏡の水位があがる、
 
握りしめたその手を放しなさい―――
 
                   わたくしと名乗るものが私に言った。
 
記憶の指先から零れてゆく虹の波紋。
 
香り立つみどりの風。 
 
あらゆる命の水辺を彩る夢幻の日没さながら
 
なにもどこにもとどまらぬことの峻厳な耀きよ。
 
 
とほうもない悲しみさえも永遠に所有することはできない。
 
 
                   わたくしと名乗るものが私に言う。
 
喪の天窓でありなさい―――
 
さいはての青を生きなさい―――
 
 
光が息を継ぐ。
 
ひらかれたそらの手の寂滅のままに。

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