千年 和田まさ子
夕べ、バスから降りようとすると
何かが体から出たので
車内に置き去りにしてきた
これまでの千年は明るかった
いくつかの夢をみたが
その結果
いまは芯から冷えている
降りると大きな泰山木があった
時間のピリオドのように白い花が咲いている
近郊のバス停は思案する人であるかのように
曲がっている
白い未来の
これからの千年を
どうやって過ごそうか
バスを降りたそこは知らない町で
先を歩く人が振り向くことはない
彼もまた自分の千年を考えている
一本の木のようになって
前かがみ
屈服
遅れているわたしの未来
やってくる時間にもそれぞれの速度があり
わたしのはスローテンポで
いつもだれかに叱られている
持ち物を放棄せよ
掛け声で耳がつぶれる
ずいぶん遠くにきた
魚の匂いがする坂道で
わたしは壊れかけている