真夜中の巡礼 森井香衣
吐息が凍る冬の街を
北極星が闇に沈んでゆくのを
二十四時と零時の狭間 風が咆哮している
私は真夜中に立っている
太陽と月が和む夜明けはほど遠く
御影石の森に棲む烏が翼を持ち上げ
舗道に落ちた黄橡の紋章
薄氷に抱かれて その一葉は
祈りの灯を静かに、静かに、映す。
四方のない時計台の長針が震えている
私は真夜中に立っている
目を閉じると駆け巡る
若葉がそよぐ あの青空
照り返す強い日差しにも生い茂る緑
水脈は鎖されるのだろうか
せいたかあわだちそうが新月を覆った季節
金星が闇に浮かぶ季節で 風が咆哮している
私は真夜中に立っている
素足のまま放りだされたこどものように
凍てつく交差路で
渇いた枝を天に伸ばす 祈りの姿で