(豹の瞳光が月の匂いを注視している) 山腰亮介
豹の
ショーウィンドウに四肢の
幾百の花びらと花びらのあいだを駆け抜けて
唸りながら
全身の紋様のなかに棲む
深遠な蒼たちの
ここではない
夜々のビルたちの真っ赤な呼吸を
沈黙した
街々の屋根でこごえる音階を
鉱石たちの眠りの爆ぜる線路を辿った
遠く 彼方のベランダで
クレマティスの蕾が放電している
いくつもの深紅の春をふるわせながら
次第に堆肥へとうつろう
牡鹿のあしおとを追いかけて
頭骨を貫き
樹々に
夜露がハウリングして
山の奥から旋回する曙光の息吹が降りてくる
大気をただよう深緑の毛髪のなかを
見え隠れする
鬼胡桃、黒スグリ、クロッカスに秘められた
視線が幾重にも交差し
雷鳴の脈搏と融和して
光子のなかを縦横に飛びまわる
豹の紋様でうごめく水晶体に
あらたな季節を狩猟する瞳光の透徹が飽和している