発光 岡野絵里子
一日が終わると
昼の陽光は忘れられ
人を包むのは柔らかい闇
親しい眠りが降りて来て
人の身体を運んでいく
「今日 古い通りにある教会で
燃え尽きたロウソクの痕を清める
孤独な修道士を見た
祈りの祭壇に新しい
小さなロウソクの列を立て
彼は修道院へ帰って行った
通りの反対側の 花屋では
空を磨くように 手を伸ばし
朝のガラスを拭いている女性と
彼女を囲む花々を見た・・」
読み直している
目の中に留められた物語
揺れれば
明るみ また昏くなる光景
夜ごと 人が運ばれていく小さな入江の
小さな死
許されて 透き通り
潮のように満ちる
ロウソク 花 セロハン それら昼の光を沈め
ひとときの死を人が眠る時
その意味は語らぬまま ただ守るように
入江は 静かに発光する