内戦(その1) 野村喜和夫
(序)
俺ら、無言のうちに、
跳ぶ、はねる、
襲う、
自由とは、
身に動詞を氾濫させること、
またその氾濫に耐えること、であろう、
俺ら、無言のうちに、
襲う、食う、
くねる、
明日という籠に囚われの、バラバラの生体を超えて、
もうどうしたって、俺ら、
逆立ちで踊れ、
(フクシマ)
奴らは言う、
フクシマの彼女を、死に至らしめたのは、
あの日のメルトダウンより、
ただ個体の脆弱性である、
よかろう、同じ個体の脆弱性において、
俺らはたたかう、
虹の根の橋のあたり、
精肉も、リンパ球も、誰彼の波瀾万丈も、
奴らはとりこんで、ふくれる、
よかろう、奪われたら奪い返す、
もうすぐ橋だ、その向こう、
回答不能の空欄をひらく扉の林立へ、
まばゆい廃墟へ、
俺ら、無言のうちに、
跳ぶ、はねる、
襲う、
(議事堂へ)
橋を越え、
俺ら、くねる、うねる、
議事堂へ、
奴らの、議事堂へ、
というのも、奴らが恐れるのは、
選挙ではない、占拠だ、
俺ら、個体の脆弱性において、
肉の肉なる原理によって、物理的に場所を占め得る、
すばらしい、それがすばらしいのだ、
奴らのまやかしの、積極的平和主義とやらにならって、
俺ら、まやかしの、積極的蜂起、
おお武器などいらない、
スマートフォンで十分、
俺ら、ただ、
やおら、集まり、
うねる、流動する、
立ち止まってはだめ、
それだけだ、そこの根こそぎ、ここの根こそぎ、
みんな語らう内臓にして、
線維質な、もうどうしたって逆立ちで踊れ、
みたいな、肉の肉なる、
糞尿の流れのごとく、
俺ら、気の骨でできた虹をかけ、
議事堂を取り巻くのだ、
そして叫べ、
俺ら、血、さらしもの、甘い丘マシーン、
俺ら、血、さらしもの、甘い丘マシーン、
するとどうなる、
奴らは恐怖する、
装甲車を出す、すると天安門だ、
かならず天安門だ、
俺ら、くねる、うねる、
議事堂へ