宝石   山口勲

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宝石   山口勲

登った岩から東京湾まで見わたせて
働いた場所のせまさを知ったこの山
二十分後に鳴りだす前の人の熊よけ鈴を
道を示す紐をたどって追いぬくと
峯をまた一つ越えたよう
雨を吸った落葉でつまづき
しりもちをつくとき岩のない場所を選ぶと
街ではどうでもよかった命が宝石にかわる
ここでは死ねないと決めつけて
それならどこでと交わる問いが
次の斜面まで駆けだしたとたん
十歩先のむき出しの
木の根を踏まないことを大切にする

 

季刊・びーぐる31号・佳作

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