日録 表現の自由が踏みにじられた日に    森川雅美

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日録 表現の自由が踏みにじられた日に    森川雅美

ゆっくりと内側から壊れている
魂の欠片の内側から壊れている
ささやかなあることでいいから
見えぬ人の小さな掌でいいから
人は何度も何度も殺されている
温度のない言葉に殺されている
ただ微かな声の訪れでいいから
捨てられた声の訪れでいいから
幾重にも重ねられる思いとは夢
抗いながらなお次の生へ向かう
ゆっくりと人の顔が落ちている
座り続ける人の顔が落ちている
ささやかなあることでいいから
見えぬ人の小さな掌でいいから
長い時間の狭間が問われている
潰れた無数の眼が問われている
ただ微かな声の訪れでいいから
捨てられた声の訪れでいいから
途切れた流れの彼方にまで届く
時に形づくられる悲しみとは足
ゆっくりと長長と晒されている
崩れるまで長長と晒されている
ささやかなあることでいいから
見えぬ人の小さな掌でいいから
失われた名前の先で弱っている
重なる嘲りの片隅で弱っている
ただ微かな声の訪れでいいから
捨てられた声の訪れでいいから
今も望み得なかった眺めとは風
先細りいく道の先の外れにこそ

人の名を語ることすらできぬ朝彼方に消える鳥の影みる

哀しみの涙流れぬ梅雨の空

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