生きものの記録2─私の愛憎詩─ 中村文昭
80***** 「Mそういうことかなぁ…」
げっこうの声と
たいようの文字と
ちきゅうの意味をもつ、三願いったいの美のことの葉を
消すたびに死に 五十一音の
言葉ことの葉を作るたびに死からよみがえる
シャボン玉の詩人が しんに
人間の絶景をふきけすガランガランの寂寥びとと向き合い
雌雄のしのぎをけずる競技に勝利し
響いてひびいて響く満月から
じぶんがたれかの生まれ変わりだという…
世界語の月桂冠を得ることなど できるんだろうか?
(気づくの遅イ!と
月光の木戸くぐり抜けたあいつに“いまごろ一家団欒?”とまた叱られそうだが…。まず大切なのは、木戸をくぐった妹リンがたしかに見た金曜日の金星の風景が何か言えないぼくだけど──、悪循環の嘘つき言葉にまどわされず、太陽と月と地球と、いやすべての星星といのちとの照応図鑑にふかく感じ入るため、荒ぶるからだの虹模様と震える私の孤独模様とを、口ベタでしずかなる「心の満月」に映し、平らかにすること。泣いたり笑ったり、かつまた怒ったり憂鬱になったり、ころころ変わるのが、心の弱さだとしても、心には弾力あり。人はよく心の声に耳澄ませと言うが、実に静かに自らの心を見つめれば、心は明鏡止水。エゴな私や暴れるからだカオスを包みこむ。この風【ルビ:パラクレイトス】の、天秤にも等しい平らかな気持ちで嘘つきな癖をもつ様様な言葉を新しく秤りなおすこと。この心次第の心が、狂えるいのち宇宙を正気に正す手始め? この手始めが、虚無むげんのブラックホールにへこまず自らの母国語とたたかい、もえる太陽うかぶ月きしむ地球三者が一つに結晶する暗い鳩になる子供心の道… ?
6歳まで神を見られたこころ次第の心は、弱くさびしく頼りにならない妹のようだが? 月光の心は絹の如くすべてをやわらかく受けとめる強さを持っている。頑なな鋼の意志とは違い、心のすぐれた能力は隣人とか他者の声に耳澄ますやさしさを持っている。いや、心のもっともすぐれた魔力は、七変化する龍宮の夢の中、一家団欒を求める死者たちの声をじかに聞きとる聴診器でもあるということか?
(…氷山の一角という言葉があります… そう、大人しいたれかの声がUの背後から聞こえてきたらしく? Uはぶるるっと首を振ったネ。
(…海面から突き出た氷は私がもつ6%の尖った言葉です。海面下に隠された氷山は、無口なからだが秘めし68%の言葉です。そして波が浮き沈む海面が26%の口ベタで頼りない心の言葉ですよ。さて──、
人間の言葉が、氷山の一角にすぎない意志言葉を用い社会生活や森羅万象を解釈しつくそうとしても、すべて解釈することなどできません。また神は、じぶんに似せて私人間を作ったのだと言うなら、6%の言葉しかもたぬ人間に似て、神のロゴスも全言葉の6%しか知らない全能者です。それゆえ? 全能なる神とて天地宇宙をロゴス権力一本ですべて吊り上げることなどできるはずがないのです。土台「神【ルビ:かみ】」と「紙【ルビ:かみ】」は同じ言葉【言葉にルビ:おと】でアクセントの違いだけ。だから神の言葉は無用の紙クズか? いいえ、人は言葉で世界を写生しその写生した家の中で暮らす生きものであるかぎり、神の言葉との絆なくして、人間は人間としてやっていけるしろものではありません。なぜなら、もし神がゐないなら、人間の欲望は堰を切る。そして暴れまくり、大地を毒地へ、生きもの全てを富の家畜へ誘い込む。その行きつく果てで、人が人を殺し人が人の人肉を食い尽くす地獄へ落ちる定めものなんですから…。
不立文字【ルビ:ふりゅうもじ】の佛さん以上に、神の鼓動は人間の鼓動と一対のしがらみ関係です。朝に四本、昼に二本そして夕べに三本の足もつ人間は、ケモノ以上の欲望に呪われながらも肉体ひとつに万象を指揮する「言葉【ルビ:タクト】」与えられし詩人現人【ルビ:げんじん】なんです…。と言いつつも? 子供心なくした6%の言葉しか使えない成人の「私」。この私とは神さまに似てすべてを解釈できると過信する「解釈」のとりこ? 覇権と虚言とナルシズムの塊? 神なしでじぶんの野蛮さを管理・制御できると錯覚する理性のうぬぼれもの?
けど、このうぬぼれは6パーの私人間に全責任があるのではないのです。責任は、からだナシにして私人間の王たる権力第一の神の無責任からもまたくるものです…。
Kよ Uは、またぼくら二人を見、そしてベンチに座ってるFをじっと見たネ──で、呟いたネ
人間が神という嘘言葉を作ったにすぎずと毒づくF。きみなら意地悪くぼくを突っつくだろう。騙されやすい私に取り憑く病魔は四人組だヨと。Uくん、四人組とはこうだ(笑)。肉体つきの私には、欲望の「サタン」と権力妄想の「悪霊」が取り憑く。そして無重力世界をただよう鏡の中の私には、すべて虚しいと語る「虚無」と、すべて救われると約束するきみの「神さま」が取り憑く。ただそれだけのことよ!と。
しかし、年上目線のきみが、ぼくの心を、死者の幻に悩まされるレビー小体型認知症!ただの病気!と嘲笑おうとも、Rock-‘n’-roll ! 人は鏡文字の幻を学び、幻を真似、幻をかみしめる生きものだ…。なぜって神なしの私とは、糸の切れた凧で独りよがりに虚無をさ迷うしかない空虚ぶつなんだからな…。実に神と私をつなぐ凧の糸を自らの手で切った近代人現代人の罪は重い!
私と神との絆なき現代?しかしこの荒地風景とて、歴史成就の途中にあるもの? 神神と人間の関係は、神はからだナシの脳天気なデジタルな記号。人は、からだアリのアナログな毛ものといった、それぞれに未熟な姿かたちを表している。なので、時代時代で暴走する大衆の暮らしや森羅のカオスを真にテームさせるためには、人間が神を、神が人間を写生し合うことで両人の仮契約を新しく契約しなおさなければならない。切ってもきっても切れないこの愛の地獄関係、虚無関係から、たがいが互いの星の定め・星の役目に目覚め、子供心もつ契約の下? たがいを建て直させなければならない?
──────────M。そういうこと?かなぁ。それとも、ああ!やっぱ、一切の神は人間の事故の素? 事故をおこす自己を無限なるものに投影した幻影の人が神にすぎないと笑う、現実主義者のほうが口惜しいけど正しい? 日本のかみも含め、神様って熱病の理性人間と大衆の身勝手な欲望を手玉に取るもっとも危険な三人衆(悪魔・虚無・悪霊)の親玉にすぎない? するときみは、混乱し自信をなくしつつあるぼくに“糸切り罪人たちに手を貸すな! 石神井公園のベンチで語り合ったこと想い出せよ!”と言わんばかりにぼくを見つめてる……ね? U、永久循環の風を悪循環の風にすり替える三人衆に怯えるな!
重力の私?無重力の私?
あるいは三人衆の親玉? そうじゃなくて
ちがうんだ異人の血を引くU──
教会の申し子黒服の青年に、キリスト教徒だけの神じゃなく、みんなの
「たった一人のかみさま」としゅんかん抗議しさけんだ
銀河鉄道の夜の、あの泣き虫ジョバンニの
たった一人の淋しすぎる私にこそ
じぶんの都合で子どものいのちをうばう
あの幻!かの幻!その幻じゃなくて!
世界でもっとも遠くにいるのに、いつももっとも身近にいるたった一人の
きみが言う“真犯人”が
めいきゅうの外に出て 虚無と背中合わせのジョバンニの声に、耳をかたむけ
神の記憶と能力をとりもどすしるしがあるんだよ
人間自立のための神との仮契約?いや神殺しの果ての神なき現代! とは言え、今なお確かなたましいは生きている。この魂の声が神との絆を取り戻すヒントなんだ、U。たれもが知っててたれもがまだ聞いたことのない一家だんらんの一瞬の音楽…たましい。わたしが、薊であったり 吹くそよ風だったり──春一番の日に死んだ黒い瞳の女【ルビ:ひと】URA(本名由里子)が、夢で死児m【ルビ:エム】を抱き上げ、ほほえんだりの…ソウル。心と私とからだが一つに溶けて、月光と日光と地球とのぬくもりをかんじたり…“ごめんなさい そしてありがとう”そう言い、生と死にほんとうの愛の架け橋を作るたましい?たましいのモバイル? ……古くて新しい未世界へのかんじ方……。
──残忍な毒牙で蟲たちを殺し
──(喰いつづけてきた青く赤い大蜘蛛が 或る日穴に落ちた
──あがいても這い出せない虚無の底で
──大グモは溜息ついた
──こんな無意味な…こんな死に方より
──(たれかに殺され食べられたなら、わたくしも
──いのちの一助になれたのに
ぁぁ!ほとけ本来の慈悲の心と実践を忘れた坊主まるもうけの現代の仏教徒たち。そして、教会の権威に隠れパワハラ・セクハラをつづける司祭たち。彼らが、世俗の宗教稼業にいそしむ現世にあって、U、宗教家たちはいったい何してる!と言うのも虚しい ぁぁ 大いなる仏はもとより小さなわたし神のなまな声を聞くことができなくなった虚無ぞこ灰色の二十一世紀の荒地。
けど。たとえ理性も宗教心もネジばかで建て直しできない時代にいても、淋しすぎるぼくら一人一人が、月をうつす空っぽな心・太陽をうつすカラッポな私・地球をうつす空っぽなからだに目覚め鍛えて、記憶喪失者の父を励まし、愛し、抱擁することこそ肝心です。神に甘えるな! 信じようと信じまいと神をこれ以上苦しめるな! 風だってガンバッテ吹いている、風など吹いていない日でも…。ぼくと気が合う緑の眼のU。がんばれチバリヨ! 淋しいしゅんかんを見逃すな! そしてさらにさみしい逆さ文字の幻の物語と真なる「原作者」であるオリジナルワーカーの美の、復活物語に目をこらせ! 真偽・善悪の価値でなく、美だけが神と人間との偽契約を破棄できる。美は人間と神とが新しく契約するための風の使者です。黄金や宝石の物欲に狂う美も含め、美は一つ。美はバラバラな人類をひとつにする最高価値の円形水晶体の輝き。
(…赤子が…笑う
(…少年が…泣く
(…青年が…泣き笑う
ひかり系?やみ系? いずれにかふるさとをもつ死者よ
生者よ! 醜いあひるの子たちよ
“なにか欲しい…でも”と呟く
子供らのこどもたちによる
あたらしい音楽!あたらしい革命!を生まんとする
風の棲み家で、今の今 月よちきゅうよ太陽よ
ともに人間の絶景を見ようよ!見ようよ!見ようよ!
地上で生きる猿もハトも梅もイチョウの樹も…
その姿かたちは、さみしく歪んだ線を描いてるけど…
淋しさから逃げ、人工的な直線で道や人生や街を作ろうとしてはいけない…
日本猿も欅の樹もまた…
……………………
姿かたちを変える山河大地の大地震に揺さぶられながら
地球の重力とまっすぐ戦い 必死に!
まっすぐに曲がった直線を描き ひびいて響き 日日生活してるんだから…
たとえ、まっすぐな一つの形【ルビ:かたち】一つの魂【ルビ:たましい】を求める歪な私が、月光の下、追ってもおっても届かない目の前にぶら下がった人参を追う愚かなロシナンテとその主人だとて、腐るな。…人生の終わりは、のぞまなくても…死してくさり果て、まっすぐに曲がって咲くかわいい花の骨なんだから…。一瞬で人間を生理し人間を作る風の棲み家は雲隠れのたましい。U たましいは肉体の悪魔と肉体の天使、666vs999のからだ心を離れてあるものではない。風をすい風をはく、いのちの鞴でまっすぐに曲がった流れ星となる旅人はバカを承知で、一人でも一家団欒! 愛馬ロシナンテにまたがり夕闇のなか突きすすむ誇り高き風の騎士【ルビ:ナイト】です。
風よ美よ ──おまえは──
ないものはないと戦【ルビ:そよ】ぐ 一と零のあいだのまっすぐ曲がった現【ルビ:あら】われ人【ルビ:びと】で
そのかぐわしい匂いは忘却の、愛の夢をつくる甘酸っぱい世界循環語
風よ美よ ──おまえは──
黒黒とどろき地球をまわる嵐や五月のやわらかなそよ風で
死んで生まれてきた者と
死んでも次を生きる人たちに吹く 一瞬の
死生一如の、ギフトのよう
まるで、長距離ランナーが走りに走り、走りの限界で息切れした時、突然! 一生が一瞬で一瞬は一生であるかのように身も心も風の蝶になって(…フッ…)と宙に浮く浮遊感! まさにからだ心が──すべてを忘れてしまう忘却の──シャボン玉になる時、凸凹デコボコ。ひとは、死者と森羅の声にはげまされ神と一如のこどもをかんじはじめる。
太陽と昼のぼんやり月の下、耳が痛いしずけさのなか
風がなる 風がさわぐ
小さなぼくらは まっすぐにまがって何処へ行くんだろう?
風がなる 風がさわぐ
見える形と見えない魂への
二つのれんあいに
悩むいがい 小さくて
無知なしゃぼん玉になにができるんだろう!
風がなる 風がさわぐ
(あかごが わらい…
(しょうねんが なき…
(せいねんが わらいなく…
あの 耳鳴りのかんかく? (…春の川で、黒髪の水藻に絡まれグイぐい死の底へ引きずり込まれた時の? (…蟬しぐるる夏の森で、道に迷い原始の猫イリオモテヤマネコと目が合った時の? (…鮮やかな秋、びゅうびゅう吠え叫ぶ台風の折れ樹にしがみついた時の? (…で、星ふる冬、目の前にぎらぎら迫る北極星のひかりに睨みつけられた時の? あの石【ルビ:いし】の?いや、からっぽな、
白い あの骨の感覚 ─…あの 「もののけ女」に触れた手の感情…─
こどもらのこどもたちのための
風の棲み家は
たま祭りの心からだを離れてあるのではない
地球のきしむ重力とたたかう
まっすぐ曲がった直線でなければ美しくない
欠陥と歪みをもっていなければ人間ではない
にんげんでなければ愛も夢もない
春夏秋冬の中、揺れる樹樹やながれる雲や舞いあがる木の葉とともに、かぜのこどもらが、ぼくらの痛む神経と骨をふきぬけるたび、ぼくらは一家団欒! 二どと輪廻転生しない美の、ポエジーの風の棲み家で、かえせ!返せと喚くおかあさまをささえる胎児の夢になり、
“腐らず生きてきてよかった”と言えるよう
(まっすぐに曲がった
人間の絶景を歌いつづける
…───……………
……………───…………───…
痛くて苦しくて死にたくて
あるようにあるぼくらの心からだの
痛くてあかるい風車【ルビ:かざぐるま】!
ゴーホーム
アットホーム
詩のふるさとへもどりたい
a【※aを左右反転 無理なら普通のa】 空あかく
i 火きいろ
u【※uを左右反転 無理なら普通のu】 水グレー
e【※eを左右反転 無理なら普通のe】 土むらさき
o 風くろく
五大からだの揺らぎのなか、母音マンダラといまだ目覚めなき沈黙の父をひとつにした(…たれかのうまれかわりで(…もうたれかのうまれかわりではない(…母子一体そく父音の、(…まっすぐに曲がって揺れる、たましいの生きものの記録よ。
赤子が 笑う
少年が 泣く
青年が 笑い泣き
そして老人が
にがり顔でほほ笑む
ゴーホーム
アットホーム
美のふるさとへかえりたい
──たれか? 江古田でエゴタリアンのぼくらを探して──