大道大乗歩行―芸能芸術起信考― 【三】
ここにはない青の抄 男波弘志
後手に蛇を解いてをりにけり
青空とも只の青ともとんぼとも
母までを蛭と泳いでゆきにけり
川蛭のけらけら笑ふ頭かな
星が生れ星が生れ蛇泳ぎをり
川蛭や母をめぐりてまだ吸はず
母羨し 蛭羨し 血を与へあひ
七星をめぐり終らぬ蛭子かな
記憶とも今ともはんざきとも母よ
水底に水の聚る昼寝どき
いつせいに死ににゆく 草水漬きたり
汗冷えて全く別の青を塗る
執筆者紹介
- 男波弘志(おなみ・ひろし)
昭和41年(1966) 真冬 出生
北澤瑞史 創刊 俳誌「季」 元会員
岡井省二 創刊 俳誌「槐」 元同人
永田耕衣 創刊 俳誌「琴座」マンの会 元会員
現在 俳誌「里」 同人
既刊句集 『阿字』(田工房)
合同句集 『超新撰21』(邑書林)に入集