惜別の歌
―国際日本文化研究センター教授・末木文美士氏に
狩野一男
おいらはなサッチョウドヒに蔑(なみ)されし〈白河以北〉を誇る者なり
天罰や神罰・仏罰くだされて、拝承しつつ人間稼業
純然たる地球現象と見るなくて地震、津波を把握し得るや
東日本大震災より二年過ぎ心身ともにぐらぐらである
東日本大震災をめぐって、「震災天罰論」の問題。
取り消された石原「天罰」発言に理解大きく示したる論
日蓮の『立正安国論』も出し天罰論をすすめられたり
〈天罰という見方は、必ずしも不適当といえない。〉んですか?
〈「天罰」として受け止め、謙虚に反省しなければいけない。〉とか
結語では〈、日本全体が責任を持たなければならないことだ。〉とも
天災に刑法犯的人災が複合せり、とする我の説
夫人のメールで知ったのだったか。
フクシマへ「講演行」をされしとか聴きたかりけり無念なりけり
僕の責任行為として、あなたへ原稿依頼できる状況ではなくなってしまった。
変節やまして撤回などをせず大学者道突き進むらむ
ではあるが、末木文美士うたふべし3・11を是非詠みたまへ
若き日のあなた思へば切なくてマックス・ヴェーバー読みたくなりぬ
学界だって、ある意味では戦場だろう。
人の世の常なる別れをするにあたり武運長久お祈り申す
作者紹介
- 狩野一男(かのう かずお)
1951年、宮城県栗原市(旧花山村)生まれ。1974年、コスモス短歌会入会。現在、選者、編集委員。宮柊二記念館運営委員。