くしゃくしゃの     虫武一俊

  • 投稿日:2013年10月18日
  • カテゴリー:短歌

詩客20131018短歌虫武

くしゃくしゃの        虫武一俊

おさなさはいつまで残る手のひらに今年もえのころぐさ撫でている

知りたくはなかったことを知る坂のフェンスと蔦の仲睦まじさ

あかぎれにアロンアルファを塗っている 国道だけが明るい町だ

ラブホテルの隣に葬儀場ができ明るいほうがひとのいる場所

しんりん、と木々をまとめてゆくような冷たさにいくたびも頬は

手に受けるコピー用紙のあたたかさ街より少し長い夜更けに

迷うよねしたくないことしかなくてドトールのある街はいい街

いずれにも終わりはあってこおろぎの薄さがおれの耳に楽しい

剥離とは新たな面を見せること駅舎の壁に陽はふくらんで

鼻をかみたくて探ったポケットを出てくるのはくしゃくしゃのレシート

作者紹介

  • 虫武一俊(むしたけ かずとし)

1981年3月生まれ。大阪府在住。
2008年に短歌を始める。現在「空き家歌会」スタッフ。
2013年「短歌男子」参加。

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