白菜の花 有朋さやか
ここからは立ち入り禁止区域ゆえべろべろばあと菜の花が咲く
すこしずつ日が長くなり切れ味のにぶき鋏のまどろっこしさ
ふりむけば転勤のない仕事しかしたことがない白昼の道
眼をあけていられなくなる陽だまりに群れをはなれた土鳩が一羽
表面にざらめのついた煎餅が好物なのか仔猫のくせに
わたしとて飼えはしないさもし猫が虎のからだの大きさならば
兄の子をかわいいなんておもわない地下足袋履きの弟の声
うわべだけをはぐらかしてもどの川の流れもおなじ海に行きつく
じんじんと花が咲いたら硬くなる白菜の葉は役目を終えて
状況は何もかわっていないのにあの黒猫を見かけなくなる