震災の歌の並べる片すみに秘密のごとく相聞歌あり 道家俊之
朝日歌壇(2011年4月24日)に掲載された作品。この「日めくり詩歌」でも、4月29日から6月23日まで、藤原龍一郎さんが新聞歌壇から今回の大災害(天災+人災、と言うべきだろう)に関する投稿歌を何首か引いておられた。
各紙の歌壇を丹念に調べたわけではないが、僕の見た範囲で言えば、特に朝日歌壇には震災・津波・原発事故を詠んだ歌がとても多く掲載され、一時はそれ以外の歌がほんの少ししか載らない、というような紙面だったこともあった。これは朝日新聞社の方針なのか、あるいは4人の選者の間でこのような採り方をしようという明示的なあるいは暗黙の合意があるのか、あるいは投稿者の側が特に朝日歌壇にはかかる時はこういう歌を送るべし、と思うのでおのずとそうした投稿歌が他紙の歌壇よりも多くなるのか、よくわからないが、ともかくも結果としては朝日歌壇にはそうした歌が掲載される比率が高かったように思う。隣に載っている朝日俳壇では、時事詠のような句の比率はおのずと低いが、さらに4人の選者の採る句の傾向がそれぞれ異なっているようにも思われ、特に先日(2011年7月18日)のように金子兜太さんと稲畑汀子さんの共選句が掲載されたりするのはちょっとした珍事に属するように見える。朝日歌壇の方は、4人の選者それぞれのカラーというよりは4選者の採る歌が総じて「朝日歌壇」というカラーをなしているように感じる。
その朝日歌壇の片隅に、あたかもその紙面への自己言及、自己批評の如くに詠まれたこの道家さんの歌が載っていて、注目した一首だった。