テレビに鳴る地震警報かの日日の警報はもつと恐ろしかつた
吉田和人「警報」「短歌」五月号
テレビ、ラジオ、ケータイ電話から、緊急地震速報が鳴り響くと、皆一様に緊張と不安を浮かべた表情になる日々が続いている。作者はこれに空襲警報を重ね合わせている。大正十四年生れの吉田和人は、学徒出陣世代であろうか。いずれにせよ、かの戦時の緊張感を知っている歌人である。同時発表の作品には次のような歌もある。
登校の途中警報に引き返し命拾ひし八月九日
被爆より四日目長崎の焼跡に友を探しし私の贖罪
長崎に浴びし放射能いかほどか白煙あがる福島原発
戦争と東日本大震災とが重ねあわされる必然性が伝わってくる。
作者紹介
吉田和人・大正14年生・「草木」所属