木漏れ日は若き兵らの墓洗ふ
NHK短歌(2011年8月21日)の入選作より。作者の木下さんは東京にお住まいの方だが、鹿児島県の鹿屋(かのや)が故郷なのだろう。鹿屋は、かつて特攻隊の基地があった所だ。一方、アーリントンはワシントンにある国立墓地。戦死者が眠る所である。木漏れ日は、かつて敵・味方に分かれて戦った兵士の墓のいずれにも分け隔てなく注いでいる。それを「洗ふ」と表現したところに木下さんの思いが込められている。この日の入選歌の中で一番いい歌だと僕は思ったが、選者の坂井修一さんは上位三首の中には採られなかった。
特攻隊といえば、先日(2011年9月19日)の俳句王国(NHK教育テレビ)の句会に出された、《翼振る一期の別れ炎天へ》(廣瀬直人)という句を思い出す。死を覚悟して飛び立った者は、地上で見送る者たちへの最後の挨拶として、機の翼を振ったのだという。泣かされてしまった句だ。